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研究

実績紹介

研究紹介

学内の他講座との連携、共同研究機関との連携、県内の各基幹病院との連携により、あらゆる領域の研究に取り組んでいます。

在宅高齢療養者の意思に沿った看取りケアシステムの構築に関する地域介入研究

塩見直人

超高齢化社会において、在宅死を希望した終末期高齢療養者・家族の意思を尊重した救命処置や看取りを尊重するために、厚生労働省や関係学会から「心肺停止時の心肺蘇生を望まない意思表示 (Do Not Attempt Resuscitation、以下、DNAR)」を含む医療提供に関する提言や指針が示されている。その一方で、DNARがありながらも心肺機能停止時に救急要請、心肺蘇生(以下、CPR)、救急搬送が行われている実態が多数報告されている。救急医療は一度開始されると、救急隊や救命センターの医師はCPRを実施するのが原則である。ただし終末期の高齢者においてはCPRの実施前から転帰が不良であることが見込まれ、かつ実施後の転帰も不良であるために、救命救急に携わる医師と消防隊員に不全感をもたらしている。同時に、搬送された療養者にとっては負担の大きい医療処置が施されるのみならず、療養場所の変更を余儀なくされ、希望した在宅死が実現できないという帰結をもたらす。

本研究では、在宅死を希望した医療介護ニーズを伴う終末期にある高齢者の救急要請・搬送の実態と、その生起の理由を、高齢療養者と家族の状況、サービス利用状況、地域的背景から解明し、それらの要因と既存の手続きに配慮した「在宅死を希望する療養者の意思の確認手続き」と「救急搬送のプロトコル」を企画・介入し、介入前後の「在宅死」と「救急要請・搬送」の質的・量的な比較評価を通じて、終末期にある高齢療養者が望む場所での看取りを完遂するための計画的・組織的な地域包括ケアシステムの開発と有用性の検証を行う

多臓器不全の成因の研究

藤野和典

多臓器不全は感染症や外傷、重症急性膵炎、過大侵襲手術等、生体にとって過大な侵襲によって生じる致死率の高い難治性の病態です。医学の進んだ現代においても有効な治療法は存在しておらず、その発症のメカニズムも未だ明らかとはされていません。この多臓器不全の原因が骨髄の異常にあると考えて、動物実験やヒトの検体を用いた研究を行っています。

集中治療室に入室した敗血症患者におけるC反応性蛋白値再上昇と、persistent inflammation, immunosuppression and, catabolism syndrome(PIICS)との関連の解析

岸本卓磨

敗血症とは、細菌やウイルスによる感染症が全身に波及し、臓器障害を呈する病態である。近年の集中治療管理の進歩により敗血症急性期を乗り切る症例は増加しているが、その後の集中治療室からの退室困難症例や、再入室症例が問題となっている。この病態を呈するものの一つに、炎症が遷延し免疫不全や栄養異化を呈することを特徴とするpersistent inflammation, immunosuppression and, catabolism syndrome(PIICS)という病態が提唱されている。二次感染などの所謂セカンドアタックを呈した症例は、PIICSにつながる可能性が高いと考えられるが、急性期炎症とPIICSの関連性はよく分かっていない。そのため、敗血症で集中治療室に入室された方の急性期炎症の再燃と、PIICSおよび生命予後との関連性につき、急性相蛋白質の代表的指標であるC反応性蛋白の推移を用いて調査を行う。

集中治療における急性血液浄化療法

田中智基

当院集中治療室では重症患者に対する治療法のひとつとして急性血液浄化療法を積極的に行っています。持続的濾過透析・PMX-DHP(Polymyxin B-immobilized fiber column direct hemoperfusion)・血漿交換・PDF(Plasma Filtration with Dialysis)などの血液浄化療法を患者の病態に合わせて施行し救命率の向上を目指しています。PMX-DHPは1982年に当院旧外科学第一講座により開発されたエンドトキシン吸着療法であり、感染症による多臓器不全を呈する敗血症性ショックに適応があります。敗血症は急激に病態が進行するため早急な治療が必要となり、我々はPMX-DHPの早期開始・長時間施行が予後を改善することを報告しました(Acute Med Surg 7:e446, 2020)。PDFも当院で開発された治療法で、血漿分離膜で血漿交換をしながら中空糸の外側に透析液を流し濾過透析も同時に行う血液浄化療法です。PDFは肝不全に適応がありますが、炎症物質除去効果などから敗血症に対する効果も期待されており、PDFによる敗血症患者の死亡率改善効果の可能性を報告しています(Contrib Nephrol. 2010;166:142-149)。これらの治療法をより効果的に使用できるように、また新たな治療法として適応を広げられるよう研究に取り組んでいます。

胸部動的撮影における肺血流、心機能評価について

宮武秀光

今まで急性期における肺血流、心機能評価としては造影CT、カテーテル検査、心臓超音波検査などでされてきましたが、検査に専門的な手技と、設備、移動を要することが問題となったいます。近年胸部動的画像という技術が開発され、通常のレントゲン撮影に加えて8秒ほどの追加撮影で肺血流、心機能がわかることが確認されており、肺塞栓症例における肺血流低下が動的撮影で検出できたことについては当科から基礎研究、症例を論文で報告しています。(Circ J. 2021; 85: 400, Circ J. 2021; 85: 361-368.)現在は臨床応用するために測定の精度について検討中です。これが臨床応用できれば、今までよりはるかに容易に患者負担、が少なく、肺塞栓、心不全が診断可能になります

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