令和5年度 第5回 抄読会(2月10日)
令和5年度 第5回 抄読会(2月10日)
本日の文献
“Early Extracorporeal CPR for Refractory Out-of-Hospital Cardiac Arrest”
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2204511
オランダで実施された院外心停止患者をECPRまたは通常のCPRを受ける群に割り付けた多施設共同無作為化比較試験です。対象はCPR 開始後 15 分以内に自然循環が回復しなかった患者で、アウトカムは30 日後の脳機能分類スコアが 1 または 2の良好な神経学的転帰を伴う生存でした。
結果ですが、両者に差は無く(オッズ比 1.4;95% 信頼区間 0.5 ~ 3.5;P=0.
52 )、患者あたりの重篤な有害事象の発生数は,両群で同程度でした。最近発表されたECPRの3つめのRCTだと思います。一つ目のミネソタの試験はかなり症例を絞った単施設でのRCTでECPRが有益という結果でした。2つめはプラハで行われた多施設のRCTですが、無益性により研究は中止。そして今回の試験でも有益性は示せませんでした。
確かにECPRが有効な症例が存在するのは理解できます。しかしこの論文でトライした全体の30%の生命予後を改善するのは無理だということでしょう。プラハの試験もオランダの試験もいずれもオッズ比ではECPRのほうが優位に出ているので、数%の改善を目標とした大規模なRCTを行えば有益性は証明できるように思います。ECPRの手技的な難易度の高さ、病院前医療との連携の強化の難しさが今後の課題で、このハードルを下げる技術革新が無いとなかなか一般的には広まらないと思いますし、それより先にBLSで回復する率が増えていき、ECPRが有効な群が減っていくような気がします。
当科では毎週金曜日に抄読会を開催しています。
クリクラ学生、研修医、レジデントにも参加してもらい、最新の文献を紹介し医局院全体の知識の向上を図っております。
もし院内のレジデント、研修医、医学生で内容に興味がありましたら、抄読会を撮影した動画がありますので、連絡をしてもらえれば共有します。