令和5年度 第9回 抄読会(3/10)
令和5年度 第9回 抄読会(3/10)
本日の文献
“Early Restrictive or Liberal Fluid Management for Sepsis-Induced Hypotension”
敗血症性ショックの初期輸液療法は、大量の輸液投与がよく行われていますが、エビデンスとしては低質です。そこで、アメリカの60の施設における1536名の患者を登録したRCTを行い、昇圧剤を併用し輸液量を制限するプロトコール(制限的輸液群)と、自由に輸液するプロトコール(自由輸液群)のどちらが90日死亡率を改善するかが検討されました。結果、90 日目までに自宅へ退院する前に何らかの原因で死亡したのは,制限的輸液群では 109 例(14.0%),自由輸液群では 116 例(14.9%)でした。(推定差:-0.9 パーセントポイント;95% CI、-4.4 ~ 2.6;P=0.61 )報告された重篤な有害事象の数は、両群で同程度でした。
外傷でもそうですが輸液量は制限した方がいいという傾向があり、行われた研究だと思いますが、結果は差はありませんでした。意見として出たのは、SOFAの中央値が3.4と低く、あまり重症ではない群での研究であることです。inclusionでは初期輸液で血圧が100mHg未満を対象としていますが、ランダム化の前に3L以上の輸液をしたものは除外されています。比較的軽症の敗血症であれば、輸液に差があっても差が出なかったというのは理解できるという意見。ランダム化の前にすでに2Lの輸液が行われており、カテコラミンの使用も制限群で59%、自由輸液群で37%であり、両者の群わけが大きく離れていないのもあるのではないかという意見がありました。この論文をもって、輸液を制限しなくてもいいという流れにはならないように思います。
当科では毎週金曜日に抄読会を開催しています。
クリクラ学生、研修医、レジデントにも参加してもらい、最新の文献を紹介し医局院全体の知識の向上を図っております。
もし院内のレジデント、研修医、医学生で内容に興味がありましたら、抄読会を撮影した動画がありますので、連絡をしてもらえれば共有します。